「キャラクター・探索者」「あなた」「情緒・物語」
『un-falling, freely』『Saltators on the head of the hand』の2作によって、2019年の現代日本がヨグ=ソトースの加護を受けた。しかし、それはやはり2019年の現代日本の話のみである。つまり、そこから追い出されたミゼーアは他の時間、他の場所で曲線世界を征服しにかかる。
その全ての場所にヨグ=ソトースを呼び出していけばティンダロスによる支配から世界を守ることはできるのかもしれない。ただ、その世界が果たして人間の住める環境かというと怪しい。少なくとも現実の世界とは異なる世界であることは間違いないと推測できるだろう。それで問題ないのであればその選択を取ることも出来たかもしれない。実際のところ、『story terror』はその選択をした世界の未来(当然これは時間的な意味ではなく、”未だ到来せず”という字面通りの意味)である。
既に人間の肉体はその全てがヨグ=ソトースに取り込まれ、あらゆる記憶(肉体)が全ての場所に存在しているが、それは個がないということでもある。全てあるは全てないに等しい。
『story terror』の舞台である小さな街はヨグ=ソトースの眷属である単衣円が青春を取り戻すための空間である。これまでと共通した舞台を用いて、母親である司空茉莉がせめて少しでも幸福をと用意したのだ。そのためほとんどの場所は終末を迎えた瞬間の時代だが、未来も過去も何もかもがどこにでもある。
この街の構成は基本的に世界そのものであり、全てがある故にあらゆる時空の人々が同時に存在することの許された場所である。許されていないのは鋭角世界のもの、探索者たち、そしてニャルラトホテプだけだ。