「肉体」「精神(寄生体)」「魂」

太古の昔、ティンダロスの王の中の王、ミゼーアによって月に住まう精神寄生体が完全に食い殺される事件があった。正確には 2019/05/01 に接続する全ての時空間において。つまり、今回のシナリオの開始のずっと前と終了時を含めたあらゆるタイミングで精神寄生体という存在は蹂躙され尽くしている。この話は『Saltatos on the head of the hand』の第二章『negative genus likely eddies』と深く結びついている。

その後、ニャルラトホテプによって「物語」が別途持ち込まれ、PLが呼び寄せられた。その「物語」は『story terror』にて強制終了した(する)。

残された肉体(PC)と精神(PL)によって、新たな物語が構成され、時間が流れ始める。

その物語は魂の情報における直前までのクライン生命保険相互会社のものだ。

彼らを騙していた綿貫教授と、彼に知恵を貸した九重御影の体を使うイス人もまた、今回の登場人物だ。

一方でニャルラトホテプは元から目をつけていた凪五十鈴に物語を注入し、彼女にも別の意識(物語により導出された仮想意識。この時点で彼女は哲学的ゾンビにほど近い)を根付かせることで聖女として君臨させることにする。

更に他方ではシャンの信者という半端な「物語」とシャンの手伝いによって意識を半分だけ取り戻した長だった男によるシャンの侵略が進んでいる。

この四勢力による三つ巴状態の始まりはやはり宙の会の対立である。シャンの信徒として精神寄生体を許さないとした派閥と、ニャルラトホテプの介入によって精神寄生体を守護しようとした凪五十鈴率いる五位一体派がそうである。

彼らはある意味で共通した思想と知識を持っていたが、その捉え方が異なっていた。一方は敵視であり、一方は崇拝だ。

次第に彼らは人間が肉体と精神と魂で出来ていることや精神が既に消え去っていることを悟ることになる。その捉え方はやはり異なるかもしれないが、皆、口を揃えて言う。

人としての営みを取り戻すのだ、と。

凪五十鈴は精神を重要視した。

彼女の神は月からの支配者であったし、持っているものを見つめ直せるほど彼女は強くなかった。

規律と信心によって彼女は多くの人に物語を与え、不完全な意識を取り戻させた挙げ句に世界を壊す。